さればこそ、一つはヒュウと唸りを発して、キミかわうぃ〜ねぇ〜

さればこそ、一つはヒュウと唸りを発して、他は轟然と音を発して、両者殆んど同時に各々の敵を目がけながら放たれましたが、まことに多幸! 千年鍛錬の大和ながらなる武道の技の冴えは、遂に俄か渡来の俄か武器に勝って、危うく弾が京弥の耳脇をうしろにそれていった途端、揚心流奥義の生んだ手裏剣が狙い過(あやま)たずブッツリと怪しい非人の太股につきささりましたので、何条いたたまるべき! ――痛手にこらえかねて、身をよろめかしたとき、ひらひらと京弥の小姓袴が、艶(えん)に美しく翻えったと見えましたが、ばっと対手のふところに飛び入ると、刹那に施されたものは遠気当(とおきあ)て身の秘術でした。


「ざまをみろッ、卑怯者ッ」


 ばたりとそこへ非人をのけぞらしておくと、何はともかく主水之介の安否が気がかりでしたから、取り急いで駕籠側へ駈けかえると、何とこはそもいかに! ――悠然と垂れを排しつつ、微笑しいしい姿を見せた者は余人ならぬ退屈男です。しかも、至って事もなげに言うのでした。